20時のテーブル ── 21時からようやく本気出す
20時を過ぎると、コンビニの袋をぶら下げて隣の部屋に行く、それがだいたい日々のルーティン。
大阪に本社と子会社、東京にも支社がある、全体で60人ほどいるデザイン制作会社で働いていました。
私は子会社に勤務。
オフィスは雑居ビルに2室を借りていて、片方が撮影スタジオ、もう片方がデザインルーム。
デザインルームには5人のデザイナーがいて、部屋の壁に向かうようにデスクが並んでいる。
私より年上の上司たちは先に帰っていることが多く、残業しているのは主に同年代以下の、社内では若手〜中堅のメンバー。
部屋の真ん中には巨大なテーブルがありました。
20時ごろになると私も含めた誰かがそこで夜食を食べ始め、ひとり、またひとりと、ふらふら集まってきては雑談が始まる。
広くはない部屋なので作業している人にも聞こえるし、自分のデスクから混ざってくる人もいる。話す内容に脈絡はない。
最近読んでる漫画のこと、レンタルして見た映画のこと、ラジオでこんなこと言ってた、子どもの頃こんな遊びをした、それから、社内の誰かのエピソード。
1時間くらいそうやってだらだらと話していました。
その1時間をなくせば早く帰れるけれど、みんなその1時間を無駄にする。
話が終わればまたそれぞれのデスクに戻ります。フォトグラファーの私だけは隣のスタジオへ。
ちょうど21時を過ぎた頃くらいからが、当時の私たちにとっては本番でした。
日中はクライアントや社内からの電話や打ち合わせ、経営者からの呼び出しなどが入って、自分の作業がなかなか進まない。
21時を回ると、その電話が一気に減るのです。
ようやく落ち着いて制作に向かえるのが、その時間でした。
帰るのはたいてい日付が変わってから。
今もずっと残している当時のカレンダーを見返すと、こんな感じ。


わかりやすく長時間働いた時期を選んではいますが、特別にひどいわけでもなく、割とこんなことがよくある日々でした。
さすがに土日もないと体力的にしんどくはなりますが、意外と苦だと思ったことはあまりない。
それは「20時のテーブル」のような時間があったからだと思います。
しかし2020年に入って状況が変わりました。
多くの人がそうだったように、コロナで自分たちもクライアントも動けなくなった。
さらにコロナは病気だけでなく、それまで見えていなかったものをいろいろと表に出したように思います。
私が会社を離れたのは、その年の年末です。
これを書いているのはそれから6年近くが経った2026年。
今は、撮影が3時間程度で終わる仕事が多くなっています。
フリーになったことで仕事も働き方も大きく変わりました。
いまの私にとっての21時は、子どもと風呂に入る時間です。
次回は独立後の話をしたいと思います。

もうオフィスは無いので二度と撮ることはできません。


