無名と指名 ── 仕事はどこから来るのか
2020年12月末にデザイン制作会社を退職し、個人事業主になりました。
誰もが知ってる企業の仕事ばかりを15年間も撮ってきたフォトグラファーがついに独立!
「私もあの人に撮って欲しい」「今回の撮影は彼に任せたい」と、業界であっという間に噂が広がって仕事が山のようにやってきました。
なんていう妄想は現実にはありません。誰も私のことなんて知らないのです。
前職では社外へ営業をしたこともなく、どうすれば仕事をもらえるのかも分からない。
いま思えば無謀。
貯金は減り、体にも不調が出ました。
それでも後悔はしていません。
全く営業をやらなかったわけではありませんが、その話はまた別の機会に。
2つのルート
デザイン業界で独立したフォトグラファーの多くは、同じ業界であるデザイン会社や広告代理店に作品を持って営業に行くことが多いと思います。
しかし自分は苦しかった時期を含めても、そこには行きませんでした。
なぜか。
フォトグラファーだけでなく、広告制作に関わるクリエイターの受注ルートは、大きく分けると2つの道があると思います。
代理店や制作会社から受ける形と、企業やお店・個人と直接つながる形です。
大きな仕事
代理店や制作会社からの案件は、仕事としては大きくなりますし、成功していけば名前も売れるでしょう。
そもそも予算も大きく、間にたくさんの人が入るので、それぞれのクリエイティビティがぶつかり合って、いいものができる。
私もかつては制作会社勤務のフォトグラファーとして、そういった大きな仕事をたくさんさせてもらいました(社員なので名前は売れません)。
フリーになってからも、いくつか仕事をする機会はありました。
その世界には自分のセンスやスキルだけでは到底たどり着けないような仕事もたくさん。
チームで取り組む相乗効果もあり、個人より何倍も大きい仕事ができる。
インテリアや料理のスタイリスト、ヘアメイク、美術スタッフ、レタッチャー、そしてアートディレクターやデザイナーたち。
ともに難しい仕事に立ち向かい、彼らから学ばせてもらうことも非常に多いのですが、そういった仕事をし続けていると少しずつ自分自身がすり減ってくる感覚を覚え始めます。
この仕事、自分の仕事だと胸を張って言うことができるか。
ここに呼ばれている各分野のプロ達のように、その人らしい仕事ができているか。
キープ文化
もう1つ、現実的な事情もあります。
関わる人が多いこの業界は、意思決定に時間がかかってしまいます。
「◯月◯日から1週間空けておいて」とキープされて、結局その期間に撮影は入らない、なんてのはよくあることです。
空振りになった1週間のギャラがあとで補填されるわけではありません。
実際にそういう状況になったこともあり、この仕事の受け方では厳しいなぁと思ったことがあります。
地上を歩く
一方で、もっとコンパクトな体制で、もっとエンドユーザーに近い仕事をしてみたいという気持ちもありました。
撮ったものを喜んでもらって、終わればお互いに感謝の言葉を言い合えるような関係。
地に足がついている、とでも言う感覚でしょうか。
クリエイターであればほとんどの人が大きい仕事を夢見ると思いますが、そればかりやっていると疲れる、ということもまた、あるのです。
私の道

結果的に、少しずつ仕事をいただけるようになったのは、人の繋がりからでした。
昔からの友人、学生時代の同期、元同僚、そして紹介してくれた方からのさらなる紹介。
それがメーカーや設計事務所、地元のお店、市役所の仕事などに繋がってくれました。
最近ではネット検索で弊社を知ってくださった企業さんからのご依頼をいただくこともあります。
誰もが知っている企業さんと直接契約を結んだりもしています。
間に誰も通さずお付き合いする形なので意思決定はスムーズで、スケジュールもすぐ決まります。
そして何より、いまはクライアントに「森脇さんに撮って欲しい」と言ってもらえる。
ポートフォリオなど、これまでの私の仕事を見た上でご依頼いただける、というのはとても嬉しいことです。
必要として声をかけてくださる皆さんには、感謝しかありません。
ようやく私は、自分のスキルとセンスを活かして、自分らしい仕事ができるようになってきた、と言えるのです。


